<執行役員インタビュー>輝く「個」が身近な時代、組織の新たな価値とは

クリエイティブ・プロデューサーやスタジオ代表を兼務しつつ、2021年に執行役員にも就任した高木。クリエイティブを志したきっかけから、アプリボットで目指したい組織のあり方についてききました。

高木 正文(Masafumi Takagi)

2018年アプリボット入社。「SSS by applibot」スタジオ代表や「NieR Re[in]carnation」のクリエイティブ・プロデューサーとして従事。2021年4月よりアプリボットの執行役員に就任。


ーーークリエイティブに目覚めたきっかけを教えてください。

 物心ついたころから宇宙に憧れ、NASAで働きたいと思っていました。高校生になり進路を考える際、工業系の大学へ進学したかったのですが、実家が貧乏で進学を諦めることになってしまい…。NASAに行くのがどれだけ大変かっていうのはあるのですが、その影響で「NASAに行くことができない」と絶望したことを覚えています。

 そんな高三の夏、在籍していた工業高校は卒業論文が必要で、ロボットの研究などをテーマに据えるものなのですが、突然友人から「一緒にギャルゲーをつくらないか」と誘われ、「ギャルゲーって卒論になるのか?」という好奇心からゲーム製作を始めることになりました。

 昔から落書き程度ですが絵を描いていたので、イラストを担当しました。そこで初めてデジタルイラストに出会います...と言っても当時はあまりよく分かっていなかったと思いますが。ただ、この時のチーム製作がめちゃくちゃ楽しかった。キャラクターや世界観を一から考えることが楽しくて楽しくて、毎日徹夜で絵を描いては授業は寝て過ごす日々が続きました。

 この時初めて「ゲームづくりを仕事にしてみたいな」と思いました。ただ、それまでとはまるで違う夢なので、自分でも本気なのかどうか確信が持てなかったこともあり、勉強してきたことをいかしてカスタマーエンジニアとして企業に勤めつつ、ゲームづくりをしたい気持ちが本当なのかを確かめました。学費としてお金が貯まってきたころ、ゲームづくりへの気持ちも続いていたので、バンタンゲームアカデミーへ進学しました。


ーーー専門学校ではどんな分野を専攻していたのでしょうか?

 当時の夢はキャラクターデザイナーでした。なので2Dを専攻すればよいのですが「せっかく専門学校に入学したのだから知らないことを学びたい」と3Dを専攻していました。自分で学費を稼いだこともあり、学業はとても頑張りました。それもあってか卒業後はスクウェア・エニックスに新卒入社することができました。非常にハッピーな気持ちでした。

 しかし3Dを専攻していたからか、最初の仕事は3Dモーションデザイナー。目指していたものとのギャップに若さゆえの悩みに苦しむ日々を過ごしていました。当時の自分はだいぶ尖ってまして、キャラクターデザインができないことがたまらなく我慢できず「自分だったら、会社を辞めてフリーになっても大丈夫だ!」なんて思って、入社一年ほどでスクウェア・エニックスを退職してしてしまいました。


ーーーええっ!いきなり退職してしまったんですね!

 そうなんですよね、そしてその結果大変なことになります。

 現在とは大きく異なり、インターネットはありましたが、仕事を得るために営業したくても企業に繋がりのある人に担当の方を紹介していただかなければならず、自前でホームページを用意し、まず他のイラストレーターと繋がらせてもらう所から始める、といった時代でした。まだTwitterやpixivなどがない時代ですね。

 さらに僕はそれまでインターネット上でまったく活動していなかったため誰にも知られておらず、一年目はイラストの仕事が無い状態でした。せっかくゲーム業界に入れたのに、何をやってるんだかという感じです。

 その後なんとか仕事をいただけることができ、カードゲームのお仕事をいただけるようになっていきます。仕事が仕事を繋げてくれて「エルシャダイ」や「ファイナルファンタジー零式」のデザインにも携わらせていただきました。


ーーー高木さんとアプリボットが出会ったのはいつごろだったのでしょう?

 フリーとして活動してから、ILCAに入社し、その後はディー・エヌ・エーで働いていました。その際に自ら主催したイベントに来ていたサイバーエージェント(以下CA)グループの広報の方から、役員の彰吾さん(竹田彰吾)を紹介してもらったのがきっかけですね。そこから会社見学をしたり、何度か食事に行くようになりました。当時は「メギド72」を開発している段階で、転職などまったく考えていませんでした。

 アプリボットの第一印象は、CAグループってイケイケなイメージもあって怖い所なのかもと思っていました。今は思ってませんよ(笑)。


ーーーそこから具体的に「アプリボットに入社しよう」と思った理由は?

 「メギド72」をリリースし、マネージャー職になって二年ほど経った2018年5月、彰吾さんから代表の浮田さんを紹介してもらいました。そこで「クリエイティブスタジオを作りたいと思っている」という話を打ち明けられました。純粋にとても嬉しい話でした。

 また、初めて会った人間にスタジオを任せるのは相当な覚悟が必要だと思うのですが、浮田さんが「スタジオの代表として相応しい方なのかを見極めたい」と率直に話してくれた点も好印象で、ぜひチャレンジしたいなと思いました。


ーーー「メギド72」を離れるとき、葛藤などはありましたか?

 正直離れたくない気持ちもかなり強かったです。ただひとつだけ「ずっとこのままでいいのだろうか」という漠然とした疑問がありました。今後大きな成長やドキドキってあるのだろうか、と思った際「スタジオの立ち上げ」という新しいミッションがとても魅力的で、このチャンスに飛び乗ってしまった、という感じでした。

 また、当時ディー・エヌ・エーでとてもお世話になっていた上司に話を打ち明け、応援してくれたこともあり、心置きなくアプリボットへの入社を決めました。


ーーーいま、高木さんが熱量高く取り組んでいることは何ですか?

 今までもそうでしたが、最近特に「個人で活躍しているクリエイターに触れる機会」が増えたなと思っています。僕との経験の違いで言うと、現在の若手の人にとってはそれが当たり前になっているということ。僕たちの世代と「企業に属するという意義」が違うのではないだろうか、果たして今のクリエイターはどれだけこの感覚を持ってくれるだろうか…と。

 企業にいる身としては、組織を強くし続けたいと思いますが、それを目指す上で企業に属するクリエイターが、個人で活躍している人と同等以上にワクワクする状態にしていかねば成長できないと思っています。現在一緒に働いてくれているメンバーはもちろん、これから一緒に働いてくれる人がそうやってワクワクする状態になるよう、取り組んでいきたいです。


ーーーアプリボットに入社してわずか1年でスタジオ代表やクリエイティブ・プロデューサーに抜擢され、そして今年執行役員にも就任されましたが、心境の変化はありますか?

 この質問は難しいですね...(笑)。執行役員になってから、むしろ変わってない部分も多くて、そんな自分が嫌だなとも思っていました。今心がけていることは、デザイナーなど職能単位ではなく「アプリボット」という会社単位で物事を考えたり話すようにしています。

 何より今回執行役員に抜擢いただいたのは、上長とメンバー双方が評価してくれているからだと思います。日ごろから、自分のことを信頼してくれているのかなと感じられることが多々あります。例えば、彰吾さんから、ご自身がマネジメントしていたころと比べて現状のアートチーム体制について「自分以外の人に任せて、自分以上に成果が出たのが悔しい」とまで言ってくれたことはとても嬉しかったですね。僕からしたら彰吾さんがしっかり基盤をつくってくれていたからだと思っています。


ーーー今後アプリボットでどんなことにチャレンジしたいと考えていますか? 

 メンバー全員がテンション高くとびきりの笑顔で「やってよかった!」と言えるような組織を目指したいです。企業に勤めている人が「個」で輝くには会社を辞めないといけない、とか、副業で「個」を伸ばしていくなどがあると思いますが、できれば組織に属すことでも「個」として活躍できている、そんな状態になればもっといいなと思っています。

 目指しているのは、イメージですが芸能プロダクションのような組織。例えばお笑いのプロダクションのように、面白くなりたい人たちが集まって、面白さを伸ばしあい、それがお客様を喜ばせる。M-1グランプリでお笑いの天下を取れれば最高に輝くことができ、組織としてもM-1グランプリなどの番組から収益を得ることができる...みたいな、そんな会社づくりができたらいいなと思っています。そのためには、「個」として輝いているクリエイターがワクワクするようなプロダクトや、いかせる新しい事業を生み出していかなければならないと考えています。


ーーー最後に、「こんな人と一緒に働きたい」という人物像を教えてください。

 一つ目は、クリエイティブに可能性を見出せる人。「新しいものなんてつくれない!」と絶望するのではなく「きっと面白くなる!」と、つくることに希望を感じている人。

 二つ目は、「自分はこれがしたい!これをつくりたい!〇〇になりたい!」という野心を持っている人。格好良いかどうかって、僕にとってはとても重要で、それをこの二つから感じています。プライドもって格好つけてる人が好きなんですよね。

 例えば「できない」ことってあると思いますが、「できる」って言い張ってしまって、できなかったときに恥ずかしいから、めちゃくちゃ頑張って食らいついて何とかしちゃう、みたいな。そういう人と一緒に働けたらとても幸せです。



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