株式会社アプリボットには全プロジェクトのインフラを一手に担う横断組織「SREチーム」があります。本インタビューでは、株式会社スクウェア・エニックスが企画・制作・運営し、株式会社アプリボットが開発を行う「NieR Re[in]carnation」や「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」などの大規模ゲーム開発を支えたSREチームのエンジニア3名より、チームの活動内容やゲーム開発に対する想いについて、話を聞きました。
<プロフィール>
(中央)伊藤 崇洋 (Takahiro Ito)
2011年にサイバーエージェントへ新卒入社。バックエンドエンジニアとして「ピグライフ」「ピグパーティ」「QUREO プログラミング教室」など複数タイトルの立ち上げ・運用を経験した後、2018年にアプリボットに異動。「NieR Re[in]carnation」の開発に携わった後、現在はSREチームやデータ分析基盤チームなど複数のエンジニア横軸チームのマネジメントに従事。
(右)西村 遊(Yu Nishimura)
モバイル向けゲーム会社でサーバーインフラの設計・構築・運用を経験後、2014年にアプリボットへ中途入社。SREチームの前身となるチームの立ち上げを行う。「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」では、開発時からサーバーインフラ全般を担当。
(左)中島 弘貴(Hiroki Nakashima)
2012年にサイバーエージェントへ中途入社。前職ではPC向けオンラインゲーム運用などを経験。入社以降「アメーバピグ」「アメーバブログ」「戦国炎舞 -KIZNA-」などのプロダクトのほか、各種ユーザー向け基盤システムの運用を担当後、2020年から現職。SREとして「NieR Re[in]carnation」および「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」のサービス運用を担当。
”サービスの信頼性”にとことん向き合う
ーーーアプリボットのSREチームの業務内容を教えてください。
伊藤 アプリボットのSREチームは、インフラ領域はもちろんのこと、「アプリボットの提供するすべてのサービスの信頼性に関わる部分全てをしっかり担保する」ことに取り組んでいるチームです。アプリボットには、小規模なWebサービスから、大型IPのゲームタイトルまで、様々なプロジェクトがあるので、1つ1つのプロジェクトに寄り添い、臨機応変に対応しているチームになります。
SREとして、サービスの可用性やセキュリティの担保、キャパシティプランニングやモニタリングの導入はもちろんのこと、私たちのスコープとしては社内の開発者の開発環境も含んでいるため、開発・運用における自動化や効率化の推進も行っています。
ーーー現在のSREチームが誕生した経緯を教えてください。
伊藤 2017年ごろまで、アプリボットはWebサービスやオリジナルIPタイトルを中心に開発を行っており、私たちも元々は少人数で「シスオペチーム」という名称で活動していました。しかし、2018年ごろから「より大きなIPタイトルのゲーム開発にチャレンジしていこう」という方針になり、それに合わせてチーム名を「SREチーム」に変更すると共に、業務内容もインフラという領域だけではなく、サービスの信頼性に関わる部分全体に広げていきました。
大規模なゲーム開発を行うにあたり、当時のチームメンバー数ではどうしても足りなくて…。本当に問題のない状態で安心安全にリリースし、お客様に楽しんでいただく環境をつくり上げたいと思い、人員強化をしていきました。SRE領域の知見がある方を探すのがとにかく大変で、中島さんは僕が頑張って口説いて異動してきてもらいましたね。(笑)
中島 当時はサイバーエージェントのメディア事業部などで7~8年ほど大規模サービスの開発に携わっており、そこで培ったノウハウを大型IPを提供するSREとしての仕事に活かせるのではないかと伊藤さんから声をかけていただきました。ちょうどゲーム事業ドメインでの大型プロジェクトに魅力を感じていたこともあり、アプリボットに異動しました。大規模なサービスを提供するアーキテクチャを開発するほか、海外展開などもあり、世界のお客様に向けたサービスを支える仕事にやりがいを感じています。
プロジェクトをけん引するSREチームへ
ーーーー直近、SREチームが注力していることについて教えてください。
伊藤 ここ数年特に注力していたことは、大型IPタイトルの開発・運用です。アプリボットで初めてIPをお借りして開発したプロジェクトでは、元々のIPの人気の高さから、たくさんのお客様に遊んでいただけるゲームになると感じていました。そのため、大規模な負荷試験をしっかりと行い、これまで培ってきたゲーム開発の知見を活かしながら丁寧にリリースしたいと思っていました。
当時、私自身はバックエンドエンジニアとして開発に携わりつつ、SREチームからは中島さんが中心となり開発に携わりました。
中島 こちらのプロジェクトでは、安定リリースを目指した負荷試験や信頼性の担保に携わらせていただきました。リリース当日は無事故で乗り越えることができ、もうすぐ3周年を迎える現在に至るまでインフラ起因による障害は発生しておらず、SREチームとしてはよい実績を積むことができたと思っています。
現在はサイバーエージェントのゲーム事業部(以下「SGE」)各社にもこの知見を共有し、ゲーム事業部全体で技術のアップデートにも日々取り組んでいます。
伊藤 中島さんにはまさにこれまでの知見を活かした取り組みをしていただき、SREチームとしても大きな自信にも繋がりましたよね。そして、直近リリースした「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」は、 SREチームからは西村さんが中心となり開発に携わっていただきました。
西村 これまでは、プロジェクト外からサポートに入るような関係性で開発現場とコミュニケーションをとっていましたが、「スケジュールや緊急度など、開発現場とリアルタイムで認識を合わせながら進めていく方が、より良い開発ができるのでは」と感じ、「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」では開発初期からプロジェクトに参画して、できることを探りながらどんどん施策を試していくことにチャレンジしました。
インフラのみならず、プロジェクトの成功の為にあらゆる支援を行うことで、「プロジェクト外からサポートするSRE」から「プロジェクト内からけん引するSRE」へ、SREチームとしてもゲーム開発に携わる考え方が大きく変わっていったと思います。また、全世界同時リリースというSGE初の試みも、数十万の秒間リクエストに耐えることができる負荷試験を行うことで、無事リリースすることができました。リリースの瞬間は、本当に嬉しかったですね!
世界最高品質のサービスをつくり、世界を震撼させる
ーーーー今後新たにチャレンジしたいことはありますか?
中島 SREチームは「アプリボットのすべてのプロジェクトの信頼性を担保する」という目標を掲げているため、プロジェクトの運用支援や基盤開発、チート対策など、プロジェクトの中に入り込みながら、サーバーの信頼性のみならずサービス全体の信頼性向上に取り組みたいですね。
お客様がゲームをプレイされる環境も多種多様なので、すべての環境において高い信頼性を担保し、高いパフォーマンスが発揮できる状態を目指すことで、結果的にお客様が「良いゲームを、より快適にプレイしていただける状態」をつくっていきたいと思います。
西村 SREチームは経験豊富なエンジニアがたくさんいるからこそ、属人的になってしまう部分もあるのではと感じています。また、アプリボットはSGEの中でも大規模プロジェクトが複数あるため、どのプロジェクトでもクオリティを担保できている状態を目指さなければなりません。これまでの経験をしっかり蓄積し、言語化や自動化を加速させ、プロジェクトを横断して知見やノウハウを展開していきたいです。そのために、最近では「負荷試験指南書」を制作して活用をし始めたり、モニタリングやコスト試算などの物事の標準化に取り組んでいます。
10年前はブラウザゲームが主流の時代でしたが、その後スマートフォンゲームが台頭しはじめ、現在はVRやSteamなどゲームの遊ぶ環境は年々進化しています。「FINAL FANTASY VII EVER CRISIS」では、SGEで初めてSteam版リリースの開発や運用に関わるなど、会社としても新しいことに日々取り組んでいるため、SREチームとしても時流に応じて、サービスの信頼性を保つために何をすべきかを考え、技術の向上に向き合っていきたいと思います。
伊藤 アプリボットはサービスを「みんなで一緒につくっていこう」というチームでのものづくりを大事にしている会社だと思います。SREチームは、それぞれが各プロジェクトを横から支える「横断組織」の体制ですが、 チームとしての目標や大事にしたい価値観を共有しつつ、プロジェクトにもコミットして、よりよいものづくりに取り組んでいきたいです。
中島 伊藤さんのいう通り、チームでものづくりに向き合うことが、アプリボットの強みであり良さなのかなと思います。SREチームではプロジェクトの人たちの「ものづくりに向き合う時間」を創出する支援もしていきたいですね。
伊藤 開発に携わる現場メンバーの環境をより良くアップデートし、その先にいるお客様の快適なゲームプレイ環境を実現させ、「アプリボットのサービスは世界最高品質だね」と言っていただけるように頑張っていきたいです。みんなでつく上げた渾身のプロダクトを、世界中に安定して届けていきたいですね。
CyberAgent Game Conference 2024
ゲーム業界への貢献をしたいという思いから、ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)初のカンファレンス開催を決定いたしました。30を超えるセッションを用意しており、普段お伝えできない技術やノウハウをお届けいたします。全てのセッションはYouTubeを通じて無料でご視聴いただけるほか、セッションの登壇者と交流ができる「Offline Meetup」も実施予定です。当日15:00からはSRE西村が「アプリボットにおける負荷試験への取り組み」をテーマに登壇いたします。是非ご覧ください。
※詳細はこちら
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