アプリボットでは毎年新卒社員に対して、トレーナーとして先輩社員が1名付き、1年に渡ってOJT形式で育成に取り組んでいます。
今回はサーバーサイドエンジニアで過去にトレーナー経験のある社員が集まり、トレーニーの育成方法や目標設定の考え方など、”育成”についてそれぞれの実体験を元に語り合いました。育成に興味のある方、育成のやり方に悩んでいる方など、この記事を読んだ多くの方の参考にしていただければと思います。
(左端)玉田 雄基(Yuki Tamada)
2016年、新卒入社。「グリモア〜私立グリモワール魔法学園〜」でサーバーサイドエンジニアとして従事。その後サーバーサイドエンジニアリーダー、開発責任者を担当。2018年11月から新規3Dゲームプロジェクトのプロジェクトマネージャーを担当。
(左中)伊藤 崇洋(Takahiro Ito)
2011年、サイバーエージェント新卒入社。サーバーサイドエンジニアとして「ピグライフ」「ピグパーティ」など複数タイトルの新規開発・運用に従事した後、技術基盤チームのマネージャーを経験。現在はアプリボットにて新規開発中プロジェクトのサーバーサイドエンジニアリーダーを担当。
(右中)嶋 紘之(Hiroyuki Shima)
2015年、新卒入社。「グリモア~私立グリモワール魔法学園~」を担当後、2016年4月より「ジョーカー~ギャングロード~」のサーバーサイドエンジニアリーダーを務める。
(右端)竹端 尚人(Naoto Takehata)
2014年にアプリボットへ中途入社。「グリモアA〜私立グリモワール魔法学園〜」でサーバーサイドエンジニアのリーダーとして開発、運用に従事。また、チーフエンジニアとしてエンジニア組織のマネジメントも務めた。現在は開発中の「SEVEN's CODE―セブンスコード―」のサーバーサイドエンジニアを担当。
◆トレーニーの目標設定で意識していること
―――トレーニーの目標設定は、どのようにしていますか?
玉田:基本的に、まずプロジェクトで必要とされている業務の中から何を任せるかを考えます。それをベースに、トレーニーがどのようなキャリアを考えているかを引き出して目標設定するようにしていました。
嶋:初めの段階で、本当にやりたいことやパーソナリティを知っておくことが重要だと考えています。宣言しやすいから“リーダーになりたい”と言ってしまっている人もいると思うので、どれくらいの気持ちでそうなりたいと思っているのかを知っておきたいですね。
伊藤:リーダーは是非目指してほしい目標の1つですが、具体的にどんなリーダー像を描いているのかによっても設定すべき目標が変わってくると思いますので、まずは本音を引き出すようにしていますね。
竹端:私も初めに将来どのようなキャリアを築いていきたいか、どのような思考性があるのかなどを聞いて、そうなるためのステップを考えるようにしていました。ただ、運用プロジェクトでも新規開発プロジェクトに配属されたとしても、まずはある程度の技術力を身につける必要があるので、最初に取り組んでもらうステップは同じですね。
嶋:どこまでできるようになったかを判断できる具体的な目標を置いてあげることも重要だと思っています。「一人前につくれるようになる」や「設計を考えられるようになる」などの目標を掲げた時に、具体的には何ができたらその目標を達成したことになるのかを一緒に考えるようにしていました。
竹端:状態目標と定量目標を両方つくってあげることが大事かもしれないですね。「リーダーになれるくらいの力をつける」は状態目標で、そのためにまずどのような開発を経験して、どのようなスケジュール管理をできるようになるといいのかを一緒に考えるイメージです。
◆失敗から学んでもらうのか、正解へ導くのか
―――トレーニーはAの実装がいいと思っていて、トレーナーはBの実装がいいと思っている時、どこまでトレーニーの意見を尊重しますか?
竹端:失敗から学んでもらうやり方はあまりしたことがないですね。もちろんトレーニーが納得するまで話し合いますが、研修ではなく業務の中でやっているので、特に運用中のプロダクトなどでは、失敗すると分かっていることをやらせるわけにはいきません。
玉田:確かに、失敗するとわかっていることをやってもらったことはなかったと思います。
伊藤:本当は、失敗して学んでいってほしい時もあるのですが、なかなか難しいですね。実装に関しては、設計時や実装レビュー時に何故そう考えるのかも含めて伝え、議論するようにしています。
竹端:仮にトレーナーの意見を採用することになったとしても、トレーニーが納得するまで話し合っていれば、トレーニーの意見を潰してしまうことにはならないと思います。話し合った結果、私の方が納得させられることもありました。私が間違っている時もありますから(笑)
嶋:なぜその選択にしたのか説明をしてもらって、良かったらそのまま作業を進めてもらい、別の手段を選択した方が良さそうであれば提案して議論することはありましたね。
竹端:話し合うことで言語化することや自分で考えることがクセづけられるので、大事にしたいポイントですね。
◆1on1ミーティングでやっていること
―――1on1ミーティングは、どのように取り組んでいますか?
竹端:基本的には、今週やったことの振り返りと、学んだことや困ったことを聞くようにしていました。そういう題材から話して、途中から雑談になっていくことが多かったです(笑)振り返りの機会であると同時に、定期的なコミュニケーションをとる機会として活用していました。
嶋:今抱えている悩みや仕事に対する考え方にフォーカスして話ができるのが、1on1ミーティングのいいところですよね。業務中、仕事のやりとりをすることは多いですが、最近関心を持っていることや困っていることについてはなかなか話せないので、有効だと思っています。
伊藤:私も、週1で振り返る機会としてKPTをメインでやった後に、ざっくばらんに雑談をするようにしていました。1on1ミーティングをうまく活用し、自身で振り返るクセをつけてほしいと思っています。
嶋:1on1ミーティングをするにあたって、直近のことを事前にまとめてきてもらうようにしていました。トレーニーの成長が止まってしまっている時は、できるようになっているポイントとできていないポイントが整理されていないことがほとんどなので、まとめてきてもらうことで次にやるべきことを明確にしやすかったです。
竹端:「話す」ということ自体が大事だと思っていて、雑談の中でぽろっと出てきた話から「そういう考え方しているのか」とわかったり、「そこは悩まなくて大丈夫!」と伝えられることもありました。
伊藤:そういった機会をより多くつくるためにも、自分からはあまり喋らず、トレーニーに話してもらうよう気をつけていますね。
嶋:私は、たまに「お茶会」をしています。トレーニーとの距離感をあまり縮められなかった時に、オフィス内にあるカフェでお茶をしながら雑談する時間をつくるようにしています。
玉田:重要なのは、人によってコミュニケーション手段を変えることですよね。
竹端:玉田くんとは、趣味の漫画やサッカーの話をよくしていましたね。嶋くんとは、アプリボット総会の話をよくしていた気がします。総会は新卒がコンテンツを企画することになってるから、企画のレビューやアイディア出しもしてましたね(笑)
嶋:そうでした(笑)トレーナーになると、「トレーニーを成長させてあげないと!」と思って仕事のフィルターを通して見てしまいがちですが、その前に人として接することが大事ですよね。
◆トレーニーのモチベーション維持
―――トレーニーにモチベーションを維持してもらうために、どのようなことをしていますか?
玉田:新卒を見ていてモチベーションが下がっていると感じたことはあまりないですね。
竹端:新卒は基本的にモチベーションが高い状態で入社してきますからね。それに、アプリボットの場合は、エンジニアが少人数のプロジェクトが多いので、実装で責任を持つ範囲も大きくなりやすいです。なので自分でつくったものを実際に世の中にリリースできる感覚を得やすいおかげで、モチベーションが下がりにくいのかもしれませんね。強いて言うなら、モチベーションが下がってしまうのは、適切な目標設定と作業の割り当てができておらず成長実感がない時だと思います。
伊藤:新卒に限った話ではないですが、適切なサイズの業務を割り振ることは重要かもしれませんね。少し背伸びしたくらいがちょうど良い気がしています。
嶋:トレーニー自身のモチベーションが下がっていなかったとしても、周囲が求める成果を出せていなかった場合、仕事に対するモチベーションが低くやる気がないように思われてしまうことはあります。そのような時は、その都度きちんと話し合って考え方のズレを修正していく必要があると思っています。
◆エンジニアとしての心得
―――トレーニーに伝えている「エンジニアとしての心得」はありますか?
玉田:よくトレーニーに伝えているのは、「チームの成果をどれだけ最大化させられるかを考えよう」ということです。とは言え成長実感がなかったり、やりたいことをできていなかったりするとモチベーションが下がってしまうので、トレーニーの希望とプロジェクトとして任せたいことのベクトルをどれだけすり合わせられるかについては、しっかり考えるようにしていました。
また、売上がなければ組織として存続していくことができないということを念頭に置いて仕事をすることが大事かなと思っています。アプリボットでは「職種を語る前にプロジェクトを語れ。」とよく言われますが、チームだからこそ、まずプロジェクト全体のことを考えようということですよね。
伊藤:まず最初に伝えている事は、「エンジニア」であることにこだわらず、とにかく自分のバリューが発揮できる何かを見つけること、ですね。新卒でまだ技術力が足りなかったとしても、出来ることはいろいろあると思っています。私が1年目の時は、誰よりも早く不具合を見つけることをモットーにしていました。初めはその不具合を直せなかったとしても、先輩に教えていただき徐々にどんな不具合でも対応できるようになっていきましたし、そもそも不具合を出さない仕組みづくりを整えていったりと、結果としてエンジニアとしてスキルアップ出来たと思っています。
嶋:私は2つあります。1つは、納期と品質です。業務を任せられたら、期日までに求められている品質で完了するのがエンジニアとしての責務です。経験が浅いうちは見積もり通りに進まなかったり、考慮不足で品質が至らなかったりすることがもちろんあります。とは言え満たすべき納期と品質は変わらないので、早い段階で自ら先輩に頼ったりレビューしてもらうなどして、確実に納期と品質を満たすよう努力してほしいと伝えています。
もう1つが、言い訳不要という話です。ゲーム開発において予想外の差し込みや変更が起きますが、それを終わらなかった言い訳にしていては先輩に細かく管理し続けてもらうことになります。想定外が起きることも計画に入れ行動し、想定外が起きたのであればいち早く対応策を考えるべきです。もしそれが出来なかったのであれば、自分が出来なかったこととして真摯に受け止め、次に活かしてほしいと思っています。
竹端:私は、とにかく「全力でやること、よく考えること」が大事だと伝えるようにしています。伊藤さんの話と似ているのですが、どのようなことでも仕事を選ばず全力でやれば、そのうち認めてもらえるものです。そして、ただがむしゃらに取り組むよりも、考えながら作業を進めた方が失敗も成功も身になると思うので、よく考えるように伝えていますね。
0コメント