【Developer Experts選出者インタビュー】クライアントエンジニア 向井 祐一郎さん

 サイバーエージェントグループでは、特定の分野に抜きん出た知識とスキルを持ち、その領域の第一人者として実績を上げているエンジニアに新たな活躍の場を提供するとともに、各専門領域において、その分野の発展のための貢献およびサイバーエージェントグループに還元することを目的とした「Developer Experts制度」があります。任命されたメンバーは、担当領域における、その技術や使われ方などについて中立的な立場で発信することで、各担当領域の活性化に貢献することを目指し、会社からは国内外を含む活動費のサポートを行い、全面的にバックアップしていきます。

 今回は、Unity領域において「Developer Experts」に選出されたクライアントエンジニア向井さんにインタビューを行いました。


向井 祐一郎(Yuichiro Mukai)

2015年にサイバーエージェントへ新卒入社、アプリボットに配属。「NeiR Re[in]carnation(© 2021-2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.Developed by Applibot,Inc.)」のキャラクター制御などに関わりつつ、Lead Developer Experience(以下LDX)としてクライアントエンジニアの開発体験の向上に会社横断で取り組む。Unityをはじめとしたゲームに関する技術に触れることが好きで、会社有志の活動として「UniTips」や「Unity パフォーマンスチューニングバイブル」の執筆を行い、個人でも毎週のUnityに関するニュースや記事をまとめた「Unity Weekly」の運用を行う。

Twitter:@yucchiy_



ーーー向井さんの業務内容を教えてください。

 2015年にサイバーエージェントに新卒入社し、当時アプリボット開発中だったゲームタイトルのサーバーサイドエンジニアとして配属されました。1年目はずっとサーバーの実装とマルチのサーバーの検証を中心に担当し、2年目にクライアントエンジニアに転向させていただきました。クライアントエンジニアに転向した当初はインゲームの演出回りの実装を担当していましたが、リリース間近になりアウトゲームのリーダーに抜擢していただきました。そこからはアウトゲーム全般と、チュートリアルシステムの開発を担当しました。

 リリース後は「NeiR Re[in]carnation(© 2021-2023 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.Developed by Applibot,Inc.)」の開発初期からプロジェクトに参画し、キャラクターの挙動と、それらにまつわるアニメーションや物理の制御を行うキャラクター制御の実装を担当しています。その際に、アプリケーションのビルド周り(CI/CD)などの整備も並行して携わっていたため、その流れでクライアントの横軸組織であるLDXを立ち上げ、アプリボットの各タイトルのUnityクライアントに関する効率化や基盤整理、アプリのCI/CDなどを担当しています。


ーーーLDXを立ち上げた経緯を教えてください。

 様々なゲームのリリースで得たノウハウを、開発中タイトルに活かしたいという想いから、LDXの立ち上げを決意しました。主に通信や課金システムやiOS/Androidのプラットフォーム対応、セキュリティ対策、アプリやアセットビルドのパイプライン構築からCI/CDなどの非ゲーム領域を中心に、各タイトルの開発の体験向上や共通する実装の共通化や基盤化などを目指しています。

 非ゲーム領域はすべてのタイトルで必要な実装ゆえ需要は高い一方、メインのゲーム開発と比べると、どうしてもタイトルを開発する側からすると優先度が落ちやすい分野だと感じています。LDXとしてプロジェクトを横断して成果を上げるためには、各タイトルの開発メンバーからきちんと信頼してもらうことが大事だと考えており、その初手として需要が高いものの手が回りにくい非ゲーム領域から着手することを決めました。アプリボットは開発中タイトルの数がとても多いからこそ、共通化できるところはしっかり共通化し、ゲームの品質を非ゲーム領域の面からしっかり担保したいと思っています。

 また、プロジェクトを横断して実装を担当するならば、自分自身がその分野において専門的な知識を持ったプロフェッショナルにならなければ、品質の担保や各タイトルの開発メンバーからの信頼を得られないのでは、と思うようになりました。プロジェクトの困りごとを、少なくとも自分の担当分野においては、最高の解決方法を提供できるように、知識をインプットやアウトプットをすることが、エキスパートとして大切なことだと日々感じています。心の変化以外にも、SGE(サイバーエージェント ゲーム&エンタメ事業部)各社から自分に相談をしにきてくださるなど、業務で関わる人が大きく広がりました。

 自分がエキスパートとして発信するからこそ、周囲の人も自分を頼ってくれるようになり、新しいチャレンジが生まれて実績が積み重なり、その知見をさらに発信していく...というように、ギブアンドテイクなサイクルがうまく回ることで大きな成果につながり「Developer Experts」に選出いただけたきっかけになったのかなと思います。


ーーー現在向井さんが積極的に取り組んでいることについて教えてください。

 特にこの数年は、Unity分野におけるインプットとアウトプットを行うことをとても強く意識してきました。個人活動として「Unity Weeky」という、Unityに関するニュースや記事を毎週まとめて発信しています。とても有難いことに「Unity Weeky」を見てくださっている方も徐々に増え、とても嬉しいですし日々の励みになっています。最近ではUnity社とご縁をいただき「Unity for Pro」にも寄稿させていただいています。


ーーー日々どのような方法で情報をインプットしていますか?

 とにかくたくさんのUnityに関する記事を読んでいます。TwitterでUnityに関する記事を投稿されている方のブログは国内外問わずすべてRSSに登録しインプットしています。GitHub上でUnityに関する情報を発信している方たちや、その方たちがスターを付けたものや、海外のUnityのニュースレターなどを参考にしたりしています。

 当初はインプットにかなりの時間と労力を要していましたが、自分の中である程度パターンや各分野の要点を掴んできたころから、インプットのスピードが上がりました。例えば、まずUnity社の公式ブログを読み大枠をインプットし、自分なりに仮説を立て、そこからみなさんのブログを読み進めることで、スムーズに情報をキャッチアップできるようになりました。

 あとは「毎週やる」を公言して実践する、ということがかなり大事なのかなと思います。「Unity Weekly」という名前の取り組みで、自分自身に制約を課して、インプットとアウトプットのライフサイクルをつくっていきました(笑)。こういった技術に関するインプットとアウトプットは個人活動の枠を超えて、実務にもしっかり活きていますし、自分自身の成長にも繋がっていると実感しています。



ーーーエンジニアとして大切にしている価値観はありますか?

 前提として、昨今のスマートフォンゲーム開発は「一人で全部はやれない」「自分だけですべてを学ぶことは不可能」だと思っています。その前提の中で、まず自分が一つでも多く専門分野を持ち、その知識によって誰かを助けることができるプロフェッショナルにならなければならない、と思っています。そのためにも、まずは自分自身の強みを自覚し、意識的に得意分野を持つように心がけています。その得意分野を強化して専門分野に昇華させ、それぞれの分野のプロフェッショナル間で知識をギブアンドテイクすることで、ものづくりがうまく回るのではないかと考えています。

 自分自身が得意ではない分野は、シンプルに周囲のプロフェッショナルに頼ること、そしてそもそも頼れる仲間やコミュニティをつくっておく、繋がっておくことも大事だと思います。また、頼れるコミュニティをつくるためにも、やはり自分自身がそのコミュニティに貢献できるように、日々インプットとアウトプットを行うことは欠かせないアクションだと思っています。スマートフォンゲームの開発クオリティや難易度が高くなっている今だからこそ、一人ひとりが得意分野を頑張り、チームでプロジェクトを成功に導いていく必要があると思います。


ーーー今後チャレンジしてみたいことはありますか?

 LDX では主にアプリケーションビルドやアセットビルドといったプロジェクトの運用支援や、基盤開発、セキュリティ対策、プラットホーム対応、システムなどをプロジェクト横断で自分一人で担当しています。アプリやアセットのビルドを基盤化して複数プロジェクトにも簡単に導入できる仕組みづくりや、セキュリティや課金周りの強化など、アプリボット全体で共通化できるところは基盤化していきたいと考えています。やりたいことはまだまだたくさんあるので、自分と一緒にLDXとして活動してくれる仲間をもっと増やしていきたいと思っています。

 また、これまでSGEのコアテク(コア技術本部)で勉強会を毎月開催するなど、社内向け勉強会やイベントでの登壇が多かったのですが、今回「Developer Experts」に選出いただいたことで、社内のみならず社外に向けた発信、特にイベント登壇なども積極的に行っていきたいです。

 Unityはゲームをつくるエンジンではあるものの、ゲームにとどまらず、かなり自由度が高いエンジンだと思っています。メタバースや少しリッチなアプリの表現などに部分的に利用するなども相性が良いと思いますし、ゲームに閉じないリッチな表現方法を実現できるのではと思っています。自由度が高いということは、そのぶん設計や細やかなつくり込みを開発者に委ねてられています。 自分自身や各タイトル開発の知見をもとに、Unityでの大規模ゲーム開発のベストプラクティスを、サイバーエージェントやアプリボットから世の中に発信していきたいです。





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