SSS by applibotではアプリボットやサイバーエージェントグループのクリエイター向けに、SSSのメンバーが登壇するセミナー「SSSスクール」を定期的に開催している。
今回はPALOW.が登壇した講義「どんな場所でも価値を出せるクリエイターになるための方法」の内容を紹介する。
・前回の記事
米山舞が語る、キャラクターが動き出す!生きている絵のつくりかた
https://applibot-pr.amebaownd.com/posts/6240917
7ZELが語る、絵を見て絵を描くな ~絵を通して学ぶ世界の見かた~
https://applibot-pr.amebaownd.com/posts/6497667
PALOW.
キャラクターデザインやコンセプトアートを中心に制作を行う。
代表作はHAL東京の2016年度TVCM「嫌い、でも、好き」篇や、League of Legends 2018 animation PVのキャラクターデザイン、「虫メカ少女シリーズ」。
・プロフィール、その他イラスト作品はこちらから
https://sss.applibot.co.jp/member/palow.html
世の中に求められるイラストを描く
PALOW.の代表作の一つに、虫とメカと少女が組み合わさった「虫メカ少女」というシリーズのイラストがある。
HAL東京の2016年度TVCM「嫌い、でも、好き」篇にも使用されたりと、人気なシリーズだが、生み出すまでには沢山の苦労があったという。
「虫メカ少女」が生まれるまでの話や、クリエイターとして成功するために気をつけていることなど、自身の経験をもとに語った。
駆け出し時代、自分の気持ちの赴くままに創作活動をしていたため、自分のやりたい表現と、求められている表現の差が激しく、仕事が限られてしまっていた。
特にPALOW.は美術大学や専門学校には行かなかったため、同じクリエイターの意見を聞く機会が少なく視野が狭くなってしまった。
プロのクリエイターとして活動していくためにも、”自分のための表現”ではなく、”人に伝えるための表現”をすることを意識したところ、徐々に仕事の依頼が増えていったという。
人に必要とされるクリエイターを目指して
”人に伝えるための表現”をするという気づきを得た後は、あえて自分が得意ではない絵柄を描くことに挑戦し、自分の表現を広げていったという。
電撃文庫 「剣と炎のディアスフェルド」 佐藤 ケイ 著
© KADOKAWA CORPORATION 2019
© Crypton Future Media, INC.
どれも同一人物が描いたとは思えないほどテイストに幅があるが、絵の伝え方を変えると、普段は興味を持たなかった人も興味を持ってくれるきっかけになり、ファンが増えたり仕事の幅が広がったりしていったという。
虫メカ少女が生まれるまで
”人に伝えるための創作”を意識して描いた集大成の作品が虫メカ少女だったという。
虫というと一般的には「気持ち悪い」「怖い」という印象を持たれるが、PALOW.はネガティブな感情は無く単純に「かっこいい」「美しい」という感情になるという。
人との感情のギャップに気づいた結果、自分の思った感情のままに描くのではなく、伝える先を意識して描いてみようと考えた。
自分のもっている価値感を違う価値観の人に受け入れてもらう為に下記のコンセプトを立てた。
・一般的には昆虫やメカを好みとしない、おしゃれ好きや女性に興味を持ってもらう。
・本来昆虫やメカが好きな層にも魅力を損なわずに伝える。
そのために下記の3点に気をつけて制作を行った。
① 昆虫の生物的気持ち悪さを消し、色や形の美しさのみを抽出する事
②メカニカルかつ、小難しく男性的な印象を減らすためあえてメカ部分を塗りつぶす事
③多くの人に受け入れてもらえるようにあくまで「可愛い・綺麗な女性」として描く事
それにより、虫の気持ち悪さ、メカの取っ付きにくさを消して、モチーフの幅を超えて受け入れられる事に成功した。
この経験から、どのようなモチーフであっても、伝え方次第で興味を持ってもらい受け入れてもらえるという自信が出来た。
また、自己認識の重要性を考えるようになったという。
自己認識し、戦略的に自分を成長させる
虫メカ少女が人気シリーズとなった経験から、自己認識を行い、俯瞰してものごとを見ることの大切さを学んだ。
この考え方を活用し、「制作のモチベーションが上がらない」「仕事で自分の描きたくない絵柄を描かなくてはならない」などといったクリエイター特有の様々な悩みに対しても応用ができる”振り子理論”を考えたという。
普段PALOW.はどのように考えて行動しているのか、図をもとにゲーム開発を例に挙げ説明を行った。
例えばゲーム開発においてイラストレーターは、ゲーム内に登場するイラストのうち、武器イラストのみを描いていたりと、開発の全体像のうちの一部分にしか関わっていないことが多く、視野が狭くなりがちだという。
そのため自分の周辺以外にも目を向けて、その中で自分がどういった立ち位置に居て、全体の中のどの機能を成すために制作しているのかを理解することが大切と語った。
そうすることにより、今自分のやっている仕事の素直な価値を理解でき、より正確に、謙虚かつ自信を持ち取り組むことが出来る。
ときには自分の置かれている環境を見つめ直し、視野を広げて考えてみることも大切だと語った。
さらに、自分の職種や立場にこだわりすぎず、もっと上位の目線を持つことによって将来の可能性が広がっていくという。
自分の価値を理解して、自分のできることがどのような場所でどのような価値を持つのかを様々な視点から測る事で時代や場所を問わず活躍することができる。
上位の目線を持つことは自分の可能性を広げることにつながるため積極的に行っていくと良いと語った。
図の中で上になればなるほど概念的になり、下にいくほど現実的になる。
概念と現実をどのような線でつなげるか常に考える事が大事だという。
実際にPALOW.は上位の目線を持ち続けることによりイラストのほかに、サウンド制作、企画など幅広いスキルを身に付けることができたという。
ゲームイラスト、アニメ作画、漫画など近しい業界のスキルを持っているクリエイターは多い。
しかしそれ以上に幅広くゼロイチでものづくりができる「どんな場所でも価値を出せるクリエイターになる」ことを目指して常に挑戦し続けたいと語り、セミナーは終了となった。
SSS by applibotでは今後も定期的に社内セミナーを行っていく予定だ。
次回は「FINAL FANTASY 零式」 「クロヒョウ 龍が如く 1、2」のイラストなどを手がけた一才の講義を紹介する。
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